怒霊界エニグマ

AENIGMA
1987/Italy , Yugoslavia/89min
監督:Lucio Fulci
出演:Jared Martin , Lara Naszinsky , Ulli Reinthaler , Sophie d'Aulan , Jennifer Naud , Suzy Kendall

周囲からいつもいじめられている女子高校生が、彼女をいじめた人間たちを怨念によって次々と血祭りにあげていく。
情報サイトより転載)

  • ルチオ・フルチの晩年に作られたオカルト・ホラー。
  • フルチ作品にしては“訳がわかる”作品ではあるが、昏睡状態ながら自分を貶めた人間に復讐を果たしていくキャシーが、その依り代として主人公エバが選んだ理由や経緯、またその行動原理といった説明的な部分は全く語らないままひたすら結果のみを追求しているあたり、やはり御大の作品だなぁと思わずにはいられない。
  • 実際のところホラー作品としては相当に物足りなさが残る。確かに、各種チューブに繋がれたキャシーが昏睡状態のままニヤリと笑うシーンには不気味さを感じ、裸で寝ている少女が大量のカタツムリに襲われ窒息死するシーンにおいては生理的嫌悪感を誘うが、所詮そこまで。
  • ホラー的な演出として、鏡の中の自分自身に襲われて絶命するナルシストのマッチョ先生、恋人の首無し死体(の幻覚)を見つけて悲鳴を上げながら逃げ回った挙句に転落死する少女と首を切断されるその恋人、夜の美術館で幻覚を見て石膏像に襲われる少女、といった多数のショック・シーンが用意されているとは言え、小手先のみのチープさのために全てが間抜けなコントにも見えてしまう。
  • 総じて作品について皮肉めいた事を言えば、御大にしては親切過ぎるほど観る者の予想を覆す結末をきちんと用意している事が一番怖い、といったところか。
  • 意味はわからないけど何だか威力がある『怒霊界』という造語を思いついた人に敬意を表しつつ、フルチ作品鑑賞時の心得である“博愛精神”を持って楽しみたい一作。

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