ABC・オブ・デス

THE ABCS OF DEATH
2012/ USA , New Zealand/129min

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  • アルファベット26文字分を26人の監督が1文字ずつ担当して、1エピソード5分の中で“死”を描いていくアンソロジー作品。
  • 死をテーマにはしているけど、全てがホラー作品という訳ではない。
  • 面白い作品ばかりではないのは当然だろうけど、好みの作品の方が少なかったのは残念。
  • 現在『ABC・オブ・デス2(ABCs OF DEATH 2)』が待機中。


『A is for Apocalypse/アポカリプス(黙示)』
監督:Nacho Vigalondo
出演:Eva Llorach , Miquel Insua
ベッドの上の初老男性の喉に、いきなり妻が包丁を突きたてる!そして外の世界では喧騒が……。見る者の想像力をくすぐらずにおかない黙示録の世界。(スペイン)

  • いきなりスプラッタ描写で始まる(多分)ゾンビもの。所謂「つかみはOK」的作品だけど、全体を通しても本作の出来の良さは突出している。

『B is for Bigfoot/ビッグフット』
監督:Adrian Garcia Bogliano
出演:Harold Torres , Pablo Guisa Koestinger , Alejandra Urdiain , Greta Martinez
“早く寝ないと雪男(ビッグフット)が襲ってくる!”必死に羊を数える少女の目の前に広がる悪夢とは? 雪とは無縁のメキシコを舞台にした怪作。(アルゼンチン)

  • 先が読めるストーリー構成。作品としての纏まりは良い感じ。

『C is for Cycle/サイクル』
監督:Ernesto Diaz Espinoza
出演:Matias Oviedo , Juanita Ringeling
穏やかな郊外の日常を脅かす芝生の上の血痕。いったい誰の仕業か? それをたどる、ごく普通の男が、衝撃の事実を知ることに!(チリ)

  • ループもの。どうも話が繋がらないような気がしないでもなく…。

『D is for Dogfight/ドッグファイト』
監督:Marcel Sarmiento
出演:Erik Aude , Steve Berens , Joshua Diolosa , Riley the Dog , George Marquez , Chris Hampton
非合法の賭け闘技場で、ファイターと狂暴な闘犬が激突。凄まじい死闘の末に、命を落とすのは誰か? スローモーションの映像がエキサイティング!(アメリカ)

  • 1回オチを見届けた後にもう一度見直すと、より楽しめる。スローモーション映像だけで押す構成力が驚異的。

『E is for Exterminate/駆除』
監督:Angela Bettis
出演:Brenden McVeigh
壁を這うクモを潰し損ねた男が一週間後、因縁のクモを撃退するが……。『MAY/メイ』の個性派女優A・ベティスが監督を務めた悪夢的な物語。(アメリカ)

  • 都市伝説にありそう。映像としての見所は無いに等しい。

『F is for Fart/おなら』
監督:井口昇
出演:中村有沙 , 村田唯
憧れの女教師に“おなら”を聴かれて、死にたいほど恥ずかしい思いをする美少女に運命の転機が! 恐怖がファンタジーに変換される井口昇の逸品!(日本)

  • 「どうですか、くだらないでしょ」感と「でも社会的な問題提起(放射能漏れ問題)も出来るんですよ」感が出過ぎて嫌味。下品でつまらない上に、自己満足だけが残る作品としか思えず、これを単に“シュールな作品”と片付けるにはあまりにもお粗末。

『G is for Gravity/重力』
監督:Andrew Traucki
出演:
波を求めてビーチにたどり着いたサーファーが大波に挑むが、それは彼の想像を超えていた……。主人公の視点で描かれる野心的なPOV作品。(オーストラリア)

  • POVの自殺もの?一発ネタにしても、もう少し興味を引く作りに出来たような…。

『H is for Hydro-Electric Diffusion/水電拡散』
監督:Thomas Cappelen Malling
出演:
ブルドッグ顔の連合軍パイロットがストリップバーでネコ顔のダンサーに見とれていたが、彼女は宿敵ナチスの刺客だった! 独創的なレトロ映像に注目。(ノルウェー)

  • 着ぐるみ+CGIのコミカルなスラップ・スティック系。どうせならもっと突き詰めたドタバタが見たかった。

『I is for ingrown/内攻』
監督:Jorge Michel Grau
出演:
注射器を手にしている疲れ切った男と、縛られてバスタブに放られた女……殺す者と殺される者の意外な関係が浮かび上がる、緊迫の一編。(メキシコ)

  • あまりにも状況説明を省略しているので、この二人が夫婦である事以外に理解出来ず…。死に至る描写は鬼気迫るものがあって良い感じに嫌な気分になれる。

『J is for Jidai-geki/時代劇』
監督:山口雄大
出演:仁科貴 , 佐々木大介
切腹するサムライの苦悶の表情は滑稽なまでに歪み、その首を斬り落とすはずの介錯人を大いに動揺させる! 異才、山口雄大が世界に放つ“ジダイゲキ”。(日本)

  • 妄想力が高過ぎる介錯人の話。確かに笑ってはいけない時に限って変なスイッチが入る時があるけど…。切腹する側から介錯人を見た妄想でも面白かったかも。ところで日本人以外に“介錯人”を理解出来るんだろうか。

『K is for Klutz/不器用』
監督:Anders Morgenthaler
出演:
セクシー美女がトイレで脱糞。流れ切らない、その断片が彼女の神経を逆なでし……。ポップな感性がきらめく毒気たっぷりのアニメーション。(デンマーク)

  • 小学生低学年が喜びそう。何故そういうオチになるのかは理解出来ないけど、別に深い意味はないのかも。

『L is for Libido/性欲』
監督:Timo Tjahjanto
出演:
椅子に縛られた状態で自慰をして、先に射精した者が生き残る死のゲーム。イクのは誰で、逝くのは誰か? 不条理バトルをエロチックに活写。(インドネシア)

  • こんな変態デス・マッチを思いついた事には感心するし、最後まで見せきる構成力もあるけど、この下世話さを面白いとは思えない。

『M is for Miscarriage/流産』
監督:Ti West
出演:
詰まったトイレに苛立つ美少女。彼女には焦らざるをえない理由があった……。新世代スプラッターの旗手タイ・ウエストが放つ、鮮烈なビジュアルに注目。(アメリカ)

  • 本アンソロジーの特徴である“映像の後に作品タイトル”という構成を一番上手く使った作品。地味だけど後味の悪さは一番かも。

『N is for Nuptials/結婚』
監督:Banjong Pisanthanakun
出演:
オウムに愛の言葉を言わせて、ロマンチックなプロポーズを決めようとする男の目論みは予期せぬ方向へ……。『心霊写真』の異才が放つブラックコメディ。(タイ)

  • コメディ要素からの落差が見所。ただオチ自体は、強引に“死”に繋げた様な不自然さが残る。

『O is for Orgazm/オーガズム(絶頂)』
監督:Helene Cattet , Bruno Forzani
出演:
全裸の美女の口から吐き出されるシャボン玉。その肢体を這う皮手袋の手……。生と性、そして死が交錯するエロチックでシュールな映像詩。(ベルギー)

  • こういった類の感覚的なお洒落映像は、そのセンスやバランス感覚には素直に感銘できるけど、理解はし難い。

『P is for Pressure/重圧』
監督:Simon Rumley
出演:
ある娼婦は、愛娘のバースデー・プレゼントを買ってやりたいがために、どんな仕事をこなさねばならなかったのか?セリフを排除した、豊潤かつ哀切な一編。(イギリス)

  • 切なさと同時に嫌悪ややり場の無い怒りなど妙に感情に入り込んでくる、ある意味一番嫌な(嫌いという意味ではなく)作品。

『Q is for Quack/アヒル』
監督:Adam Wingard
出演:
『ABC・オブ・デス』に参加したものの、アイデアに煮詰まった監督と脚本家。“俺たちだけは本物の死を撮ろう”と決めた彼らの想像の終着点は!?(イギリス)

  • 反則気味なメタ・フィクション作品。その割りに意外とベタであっさり気味なオチに“逃げ”が見えなくもない。

『R is for Removed/切除』
監督:Srdjan Spasojevic
出演:Vanja Lazin
焼けただれた皮膚にメスを入れるドクター。しかし、患者は医師たちの想像を超える殺人鬼だった!モンスター映画のごときダイナミズムが圧倒的!(セルビア)

  • 人によっていろんな解釈が出来る作品。是非とも、あのフィルムは何なのか、そこには何が映っているのかなど、もう少し説明描写の入った長尺で観たい。皮膚から銃弾を作り出すあたりは少しクローネンバーグ的。

『S is for Speed/スピード』
監督:Jake West
出演:
砂漠で皮コートの大男から逃れようと、車を走らせる美女の運命は!? ラス・メイヤー作品や『マッド・マックス』シリーズへの愛情が垣間見える快作。(イギリス)

  • (スピードと呼ばれる)ドラッグのオーバードースで死神に魅入られた美女が車(のスピード)で逃げ切ろうというバッド・トリップもの。もう少し緊迫感が欲しいカーアクションなど何だか色々と惜しさが残る。

『T is for Toilet/トイレ』
監督:Lee Hardcastle
出演:
独りでトイレに行けない、幼い少年。ついに便意を我慢できなくなり、彼は勇気を振り絞るが……。公募で選ばれた新鋭監督のストップモーション・アニメ。(イギリス)

  • 独特のタッチが印象深いクレイ・アニメ。起承転結が効いた真面目なつくりのストーリーも好印象。ファンタジーではなく、極めて現実的で悲惨なオチには驚いた。

『U is for Unearthed/発掘』
監督:Ben Wheatley
出演:Michael Smiley , Neil Maskell , Robin Hill , Laurie Rose , Tilly Gaunt , Simon Smith
消防士たちや神父を蹴散らし、逃げ回る凶暴なモンスター。この怪物の正体は? モンスターの視線からとらえたPOV映像の臨場感が凄まじい!(イギリス)

  • モンスター(ヴァンパイア)視点のPOV作品。退治する時に牙を抜く描写を入れているあたり、この監督はヴァンパイア好きに違いない。でも長編だったら間延びして飽きそう。

『V is for Vagitus/産声』
監督:Kaare Andrews
出演:Kyra Zagorsky , Michael Rogers , Jeremy Raymond , Elisabeth Rosen , G. Patrick Currie , Johnson Phan , Fraser Corbett , Daniel Bacon , Seth Ranaweera , Casey Andrews , Leo Dowd
2035年、出産が制限されている社会で、任務遂行中の繁殖管理局の女性エージェントが直面した驚がくの真実とは? 肉弾アクションの見せ場も満載。(アメリカ)

  • 明らかに他作品とは一線を画すハイ・クォリティの近未来SFサスペンス。意外過ぎる展開が待っている。これも長編で観たい。

『W is for WTF/カオス』
監督:Jon Schnepp
出演:
『ABC・オブ・デス』のためにアニメを作っていたクリエイターたちに、アニメの内要以上に凄惨な現実が降りかかる! 世界滅亡を見据えた衝撃作。(アメリカ)

  • これまたメタ・フィクション作品。まさかネタカブりするとは思わなかっただろうけど、本作の方は、あまりにもシュールを狙いすぎて単に雑多な出来に終わったという印象。

『X is for XXL/ダブルエックスエル』
監督:Xavier Gens
出演:Sarah Bonrepaux
肥満をバカにされることに疲れ果てた女性が、ナイフと電動カッターで肉体改造に挑む! フランスの異才ザヴィエ・ジャンが描く鮮烈なスプラッター。(フランス)

  • グロ系短編ホラーの見本のような作品。気持ち悪さと痛さを感じる映像にブラック・ユーモアも忘れない手抜きの無さが見事。

『Y is for Youngbuck/ティーンエイジャー』
監督:Jason Eisener
出演:Rylan Logan
子どもたちのバスケの試合をいやらしい目つきで見つめる中学校の用務員。彼は、その報いを受けようとしていた……。インパクトのある映像の羅列に注目。(カナダ)

  • 誰が見ても嫌悪感を持つであろう用務員役の存在感と頑張りこそ全て。気付かなかったけど、登場する時に『悪魔の毒々モンスター』のテーマ曲が使われているとか。

『Z is for Zetsumetsu/絶滅』
監督:西村喜廣
出演:Hiroko Yashiki , Je$$ica , Hiroaki Murakami , Demo Tanaka , Seminosuke Murasugi , Kurumi Ochiai , Arata Yamanaka , Naoko Takahashi , Tsuyoshi Kazuno , Sadashi Matsubayashi , Yoshio Komatsu , Katsuyuki Miyake , Atsushi Hiroki
放射性物質に汚染され、国民のDNAが劇的に変化した日本で、裸女たちのバトルは続く……。カオスとエロス、バイオレンス、毒気が氾濫する問題作!(日本)

  • 一目見て西村監督作品だとわかる作家性は凄いけど、いつも同じようなスプラッタ表現で変わらない下品・下世話な映像感覚と世界観はもう飽きてきた。車椅子の男の滑舌が悪過ぎる。

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